アンチエイジングにも関係アリ!?マスト細胞のあれこれ


私たちの身体のいたるところにある細胞「マスト細胞」を知っていますか?マスト細胞は免疫機能に深く関わると言われていて、お肌や身体の調子に大きな影響を与えると考えられています。
今回は、美容やアンチエイジングの観点からも注目が集まる、マスト細胞がどのようなものかを見てみましょう。

「マスト細胞」とは?免疫機能と深い関わりが

マスト細胞とは皮膚や粘膜など身体のいたるところに存在している白血球の一種です。

私たちの体内にある「マスト細胞」


日本薬学会によると、マスト細胞は次のように定義されています(※1

「気管支,鼻粘膜,皮膚など外界と接触する組織の粘膜や結合組織に存在する、造血幹細胞由来の細胞」

顕微鏡で観察したときの見た目から、別名「肥満細胞」とも呼ばれますが、いわゆる肥満症とは関係がありません。
マスト細胞は今のところダイエットとは無関係ですが、皮膚炎などのアレルギー症状の原因を握る細胞といわれていて、内科領域だけでなく美容の観点からも注目が集まっているのです。

アレルギー症状の原因として有力視

マスト細胞に関しては、まだ未解明な点が多いのが現状ですが、花粉症などのアレルギー症状を引き起こす原因として有力視されています。
岡山大学の研究(※2)によると、マスト細胞はアレルギー物質に触れることで、強いアレルギー反応を起こす「ヒスタミン」と呼ばれる物質を放出します。ヒスタミンは一般的にくしゃみや鼻水などのアレルギー反応を引き起こしますが、お肌にはかゆみや腫れ、そして慢性的な皮膚炎など症状を引き起こすことがあります。
花粉や食べ物など、アレルギー症状の原因(アレルゲン)に触れることで発生する困った症状の背景には、マスト細胞の存在があったようです。

アンチエイジングの鍵!?美容とマスト細胞

花粉症やアレルギーで悩んでいる人は、ここまで読んでマスト細胞に対して悪いイメージを持ったかもしれません。マスト細胞はヒスタミンの他にも、炎症反応を引き起こすさまざまな物質を作り出すといわれているため、厄介者のようにも思えます。

健康と美の鍵を握る?マスト細胞の研究

しかし、マスト細胞の研究が進んだことで、アレルギーに関する新たな見解や治療法の開発も進みつつあります。マスト細胞はもともと人の体内に備わっている細胞で、切り離せない存在です。マスト細胞は健康と美の鍵を握る細胞とも考えられるため、今後の研究結果からは目が離せません。

マスト細胞とお肌の老化には深い関りが!?

名古屋市立大学が実施した研究(※3)では、加齢によってマスト細胞の数や分布位置、外観などに変化が見られたといわれています。
若い皮膚組織にあるマスト細胞は輪郭がはっきりしていますが、年齢を重ねるとこの輪郭が変化していたと報告されています。一方、加齢にともなって、マスト細胞に特有な「脱顆粒(だつかりゅう)反応(分泌反応)」が活性化したとのことです。
つまり、ポイントは2つ。

  • 皮膚に存在するマスト細胞の数や外観は年齢とともに変化している
  • 加齢によってマスト細胞が活性化している

どちらも考察の段階ですが、マスト細胞とお肌の老化には深い関りがあると考えられています。また、一説によると、マスト細胞が活性化されると、脱毛や髪の毛の発育が遅れる原因になるともいわれています。
つまり、女性の若々しさを左右するお肌や髪の毛の状態には、マスト細胞が影響している可能性があるのです。研究が進むことで、新たなアンチエイジングの方法が開発される可能性もあり、期待が高まります。

マスト細胞へのアプローチ法は?

このように、美容に密接に関わりがあることが疑われているマスト細胞ですが、私たちがマスト細胞をコントロールするために、何か方法はあるのでしょうか?

アレルギー皮膚炎がある場合は内服薬を


まず、アレルギー症状に関しては、薬を使った治療法があります。主なアプローチ法は次の2つです。

  • ヒスタミンなど、マスト細胞が作る物質へのアプローチ
  • サイトカインなど、マスト細胞に影響を与える物質へのアプローチ

なお、サイトカインはマスト細胞の反応に強い影響を与えると考えられる物質です。これらのマスト細胞に関わる物質を抑制することで、アレルギー症状が和らぐと考えられており、多くの薬に応用されています。すでにアレルギー性皮膚炎で内服薬を処方されている人も、薬のタイプを変え、アプローチ法をスイッチすることで症状がさらに緩和される可能性があるでしょう。
また、原因の分からない肌トラブルで悩んでいる人は、自覚がないだけでアレルギー症状にかかっているケースもあります。お肌の調子が悪いと思ったら、一度皮膚科を受診してみましょう。

ビタミンAの過剰摂取を予防

東京大学 医科学研究所の発表(※4)では、「過剰なレチノイン酸(ビタミンA)が皮膚中に存在する状況では、マスト細胞の過度な活性化が導かれ皮膚炎が起こる」ことから、ビタミンAの過剰摂取に注意を促しています。
ビタミンAは美白やアンチエイジングに効果が期待される、いわゆる「美肌成分」であり、ビタミンAを配合した化粧品も数多く販売されています。しかし、ビタミンAを過剰摂取するとマスト細胞を活性化させ、お肌の炎症を引き起こす恐れがあるだけではなく、嘔吐や下痢などといった中毒症状の危険性も指摘されています。
ビタミンA自体は食品にも含まれる成分で、適量であれば健康に役立つ成分ですが、くれぐれも適量を保つことが大切ですね。

マスト細胞にアプローチする美容成分

ビタミンA以外にマスト細胞にアプローチする美容成分には、どのようなものがあるのでしょうか。

カミツレエキス

ロート製薬の研究(※5)によると、植物性エキスであるカミツレエキスには、マスト細胞によるヒスタミンの分泌を抑える効果があるとされています。カミツレエキス以外にも、ビワリーフエキス、そしてコンフリーエキスといった植物性エキスにも、抑止効果があると報告されています。

セラミド

お肌のうるおいを守ってくれるセラミド。セラミドにはマスト細胞の活性化を抑止する作用があると考えられています。この情報は東京大学の研究(※6)が明らかにしたもの。セラミド単体ではなく、セラミドと皮膚に存在するLMIR3と呼ばれる物質と結びつくことで、マスト細胞にアプローチできるとのことです。

おわりに

 
アレルギー症状やお肌の状態に深い関係があるといわれる、マスト細胞。まだまだ謎な部分が多いマスト細胞ですが、アンチエイジングとの関わりも有力視されています。研究が進めば、アレルギーの治療法や、若返りの方法が開発されるかもしれません。ぜひ、今後の動向に注目していきましょう。

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